精神科病院入院患者さんの身体合併症

2010年05月29日

精神科病院に入院中の患者さんは、心(高次脳機能)の不調で入院しています。心が不調になったのだからといって、身体の病気になることを免除されることはありません。いろんな身体の病気を合併します。精神障害のある方でも、身体の病気になれば、精神障害のない方と同じように、現在の進歩した医療を受ける権利があるはずです。ところが今年の診療報酬改定で、行政はその権利を奪い取ろうとしています。
入院中の患者さんの身体の病気について、他の専門的な病院を紹介した場合、その日の入院料(つまり精神科病院の収入)は減らされることになりました。それだけなら、精神科病院が泣いて我慢すればよいのです。我慢できる限界がどの病院にもあるのですが、その話は置いておきます。しかし、紹介した病院にも、その日一日分の薬しか出してはいけないとか、様々な診療行為に対する制限がかかります。
つまり、精神科病院に入院中の患者さんは、身体の病気になってもよっぽどのことがなければ、専門家ではない精神科医師〜そこにいる専門外かもしれない内科医師(大きな総合病院ではその専門・専門の内科医がいるのに)に診てもらいなさいという、政策誘導です。
もちろん精神科病院は病院ですから、ある程度の身体のための検査機械や治療薬を用意し、精神科医師も医師ですからある程度の身体の不調には対応します。ですが、出来ることと出来ないことがあります。
以前から『受診抑制』といって、病気になった人が医療機関を受診しにくくすることによって、国民の医療費を少なくしようという、あさましい国の政策があるのです。精神科病院だけでなく、診療科の少ない病院に入院中の患者さんは、主な病気以外は専門家でない医師に診てもらいなさいという、とんでもない制度です。
早く改めないと、好きで心の病になったわけではない患者さんに、更なるハンディキャップを負わせることになります。本当に困った『改悪』です。

松尾典夫




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5月2日の断酒月例会

2010年05月04日

黄金週間の連休、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
ブログ書き込みを長い間お休みしていました。私は年度替りで、たいそう多忙にしていました。今年度から、今まで以上に院外での役職や仕事が増えて、病院に居ないことも多く、もはや自分で患者さんを受け持つのは難しいのかもしれないと考えています。もう少し松尾病院で働いてくれる精神科の医師が増えないか、悩みのタネです。
ところで、5月2日は北九州断酒友の会松尾病院支部の月例会で、連休の最中にもかかわらず、院外からも多数の参加がありました。当院の院内断酒会は、『北九州断酒友の会松尾病院支部』ですが、北九州断酒友の会だけでなく色々な断酒会組織の方が参加されます。座談会という形で、参加した全員が順番に自分の考えているところや、体験などを語ります。断酒する前はとても苦しくて気持ちも落ち込み、死ぬことまで考えていた人達が、とりあえずアルコールを飲まなくなり(それで回復したわけでなく、回復の第一歩なのですが)、色々なことを振り返り、他の依存症の方の話を聞くうちに、その人自身が変わっていくのです。それを傍で見ていて本当に凄いんです。
最近は、女性の依存症の方も少なくなく、回復して行った女性はみな美しくなっておられ、依存症のときとは別人のようです。昨年5月の松尾病院支部45周年記念大会の『幸せに生きてます、断酒して』というテーマを思い出しました。アルコール依存症の方に一人でも回復していただいて幸せに生きて欲しいと願っています。
ハッピーエンドばかりではありません。一方で、「自分は依存症ではない」と否認したまま、あるいは「自分は依存症だ」と認めていても、どうしても断酒出来ずにどんどんどんどん苦しい人生を送っていく方、最後には亡くなる方も居られます。100%の方を回復させることなど出来ません。でも出来るだけ多くの方に回復していただきたいのです。
私自身は、アルコール依存症に関して精神科医としての最低レベルの診療は出来ているつもりですが、アルコール専門医ではありません。当院の医師にも理事長を除いてアルコール専門医と呼べる医師はいません。しかし当院には、優秀なアルコール依存症に対応するチームがあります。そのおかげで少しずつ退院後に断酒する患者さんの割合が増えています。そういう患者さんから幸せをおすそ分けしていただいているのは、本当にありがたいことです。
松尾典夫

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